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詩作品1「ひとの声」光冨郁埜

ひとの声 光冨郁埜

会うことのないひとたちの声
こころの輪郭(かたち)の外がわから
(空腹と眠気とにさいなまれながら
物をたたく乾いた風の音と
建物をきしませる低い空がおおう

ここから離れた場所
見知らぬひとの
(いや生まれる前にどこかであった顔かもしれない
その裾にふれてみる

ひびわれた街に
いく層もの
窓に映るひとたちの輪郭(かたち)
絶えまない車の列に
(これは現在(いま)であろうか、それともずっと過去(まえ)であろうか
寸断されては、また繋がっていく

枯れた枝先に空がささる
そのかたむく並木道に
茶色の手袋が置き忘れられて
ひとの抜け殻がうまれている

会うことのないひとたちの
それぞれの温もりに
そっと指をおいてみる
(その先にある駅の向こうまで
(その先にある駅の向こうまで

大きな翼の影に日が落ちて
(そむかれる、その白い顔に両の手をそえる

胸に手を置きながら
わたしは気づかないふりをして
会うことのないひとたちの声をまとう

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Category : 詩作品
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